知恵マルシェ2015

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地域に根ざしてクリエイティブな場や繋がりをつくり続けてきた、
人気の5組の店主たちによる、リアリティーある知恵を交換するトークセッション。

11/28(土)19:00〜21:00
南港ATC ITM棟2F シオンなぎさのホール

出演:
・鯵坂兼充(iTohen)
・奥山天堂(millibar)
・河上友信(GLAN FABRIQUE inc.)
・寺脇永子(ダイヤメゾン)
・山川正則(レトロ印刷JAM)
・清水柾行(aozora、デザインマルシェ委員会)

 
 
清水:一昨年、第1回目の知恵マルシェのテーマは「ものづくり環境」。地域コミュニティや、持続的社会をつくっていくための場作り、エコロジーなど、ものづくりを含めたデザイン環境・ものづくり環境がどうなっていくかというお話でした。
去年2回目は「ものをつくる・伝える」がテーマ。東京からクリエイターの方に来ていただいたり、地方のブランドを伝える活動などをお聞きして、つくって伝える、発信するお話で知恵を交換しました。
3回目の今回のテーマは、つくったモノを紹介する「場」。一番身近な、最初のチャンネルである「お店」に注目しました。みなさん感じてらっしゃると思いますが、店はただモノを売っている場というだけでなく、人がつながるための仕組みとしても機能している、という風に変わってきています。今回はデザインマルシェにも出店していただいている、お店の店主の方、それぞれのリアルな、クリエイティビティ溢れる知恵を見つけていきたいと思います。
まず、お店紹介を兼ねた自己紹介をお願いします。

鯵坂:変わった名前ですが、鯵坂と申します。鹿児島の辺境地、川の内と書いて川内(せんだい)市というところで生まれました。26年前に大阪に出てきて、本業のグラフィックデザイン会社SKKY(スカイ)の傍ら、iTohen(イトヘン)というギャラリーを開いています。デザイン学校の講師をしていた03年に、教え子3人とスタートしました。

清水:昔、鰺坂さんがiTohenをオープンしたかする前に、SKKYさんのチラシを見せてもらって「この人何考えてんねん!面白そう!」って思ったんですよ。

鯵坂:そうそう、自分でも箍が外れたような(笑)。デザインをするときに大切にしたいのは「異物混入」なんです。同じようなギャラリーのチラシが並んでても、これなんやろな?って思ってもらうものをつくるのが僕の仕事。チラシをつくる時に展覧会をする作家さんと話をして、僕の中にあるちょっと形の変わったフィルターを通したら、独特な仕上がりになるようです。

清水:最初会った時は爽やかなアニメに出てくる少年のようなイメージで(笑)、その後に作品を見たからギャップが面白い。

鯵坂:店舗のレイアウトはオープンしてからほとんど変わっていません。ギャラリーを始めて3年ぐらいで、自分がやりたいのは「勝手に始めた公民館」だと気づきました。入り口からすぐの「無理矢理コーナー」は、いろんな所から持ってこられたりするチラシが、期日を過ぎてゴミになってしまう前に、袋詰めにしてでも無理矢理持って帰ってもらうコーナーです。僕は家でも職場でも読書しないのに、毎日阪急電車で通勤中にすごく本を読むので、本のコーナーに電車の椅子と同じグリーンの椅子を置いています。さらに進んでいくと、気づいたらギャラリーで絵を見るハメになってしまう配置です。奥のデザイン事務所で作業してる僕たちからは死角になっていて、一回入ってしまうとすごく長く居てもらえる。

清水:それは設計の時に意識して?

鯵坂:はい。しつこい性格で、30パターンぐらいレイアウトを考えました。作家さんは一生懸命作っているので、ゆっくり観てもらうことで、作品が出来上がるまでの過程を想像してもらえたら作品のファンも増えるんじゃないかなと。

清水:確かに、作品を観る時にパッと見切ってしまうことはありますね。ここでは普段よりもっと深い空間に入って見ることができそうです。
次は寺脇さん、ダイヤメゾンというブランドをされています。

寺脇:南堀江のちょっとはずれた場所、大阪市立図書館の近くにあるお店です。私の実家が東大阪でアルミ製品の工場をやってまして、ブランド名の「ダイヤ印」の「家」というコンセプトで、ダイヤメゾンと名付けました。いま隣に座っているミリバールさんのマルシェに出店させてもらったのが、店舗を立ち上げるきっかけでした。
お店の構成は食堂、ダイヤ印を含めた生活雑貨の販売、小さなギャラリーです。ダイヤ印は昭和10年頃に、「くらしにやさしいアルミ製品をつくる」というコンセプトで、私の祖父が始めたアルミニウムウェアのオリジナルブランドです。

清水:それって今でも伝わるような言葉ですよね。

寺脇:そうです。今は「くらしの中のアルミ製品をつくる」と言ってます。昔は街の金物屋さんで普通に売られていたものです。学生コップは、幼稚園や小学校の水飲み場でうがいをするために置いてあったり、遠足のリュックにぶら下げていったり。戦後あたりにお子さんだった方は脱脂粉乳を飲むのに使ったとか。「これで飲んですごく美味しくなかったの」って(笑)。創業当時からつくり続けている、寄せ鍋と学生コップは、2012年にグッドデザイン賞の、ロングライフデザイン賞をいただきました。

清水:初めて見ても、これはロングライフ商品だって思いますね。

寺脇:祖父は商品を開発する時に、百貨店などを歩いて、くらしに必要なものを探していました。経営理念は「目立たずに浸透する」。社員は20人以上にしないで、目立たずにオリジナルのものづくりをしていたら生きていけるって。細々と、ですけど。

清水:逆に、細々と続いてるのが良いです。大企業が京都の中小企業を視察するという企画もあります。京都でものづくりしてる企業って、社員50人未満で創業100年とか、10人未満で300年とか。

寺脇:祖父は工場を立ち上げる前に、京都の鋳物屋さんで修行していたので、たぶんそういう影響をうけていると思います。父の代に変わってからも変えるという意識はないようです。新しい商品を開発するというよりは、よりシステマチックに。大正時代の古い機械も最新の機械も取り入れて、少人数でも対応できる小回りのきく工場に設備面を整えています。
アルミ印を良い商品だと思っているのは自分だけなのじゃないかと不安もありましたが、「アルミ製のものを探してました」とか「日本製のものがほしかった」とか、アルミ好きの方がこんなにいらっしゃるんだと驚きました。実家の工場のように、日本製のものを作っている人は本当に苦労しています。私は「国内フェアトレード」というのを意識していて、適正価格で販売して、適正な価格を工場に納めたい。そこを理解する方が増えてほしいです。

清水:では次は、つながりのある奥山さんお願いします。奥山天堂さんって本名ですか?

奥山:天堂は芸名です。僕は子どものころからずっとものづくりが大好きで、将来ものづくりの仕事をするときに作家ネームを持ちたいと思い、お寺さんにいだたいた名前です。ミリバールの名刺をつくるタイミングで使いだして10年くらいになります。
今のミリバールの前に、船場でコンテンツレーベルカフェというお店をやっていました。作品展や映画上映会、舞踏などいろんなイベントを開催して、ちょうどカフェブームで取材を受けることも多く、忙しくさせていただいてました。ところが10周年を迎える目前に、火災の被害にあって店が全焼してしまったんです。その1年後に、コンテンツレーベルカフェのコンセプト「食を通じた小さな文化施設」を引き継いだ、ミリバールというお店を始めました。

清水:名前をミリバールに変えたのは、何か思いがあって?

奥山:前のお店が10年近く続いていて、名前を知ってくださる方もいたのですが、あの時はあの時の自分の気持ちで思いついた名前だから残す必要はないと。商売のやり方で言えば下手なのかもしれませんが、名前は変えようと思いました。
オープンして1年くらい経った頃から、毎月第一日曜日にミリバールマルシェを開いて、ミリバールに出入りしている業者さんとその商品を紹介しています。それぞれにこだわった作り手さんが多いので、たくさんお客さんが来てくださって。ビルの1階でマルシェを開く、同じ日の同じ時間帯に2階のサロンスペースでリースのワークショップ、隣のギャラリーでリースの作品展という、「行ったついでに出会うもの」があるようにしています。

清水:ひとつの空間が常にそういう風になるように。

奥山:なかなか難しいですけど、なるべくそうしています。
マルシェとは別の切り口のワークショップも企画しています。例えば、いつもはミリバールマルシェに出てもらってる「あさひ亭」の女将さんに、こだわりのお出汁とか佃煮についてレクチャーを受ける会には、百貨店のバイヤーさんなど、食に詳しいプロの方々が集まってくださいます。
ビルを一棟かりていて、2階と3階は一面ガラス窓になっています。初めて建物を見た時、1階が飲食店で、2階3階の電気がついてたら良いなってイメージが湧きました。人が集まって、灯りがついていて、地域と関わっていけるイメージです。

清水:次は、今回のマルシェではシルクスクリーンのワークショップをしていてただいてる、レトロ印刷JAMの山川さんです。

山川:いつもお世話になっております。印刷のご注文をいただいたり、出店者さんともパネラーさんともいろいろご縁がありまして。レトロ印刷JAMという、孔版印刷の通販をしています。孔版印刷は、ズレる、かすれる、インクが落ちるというくせのある印刷方法です。もともとはスピード印刷を手がけていましたが、クリエイターさんからの要望に応える形で07年にレトロ印刷をスタートしました。レトロ印刷という言葉は、孔版印刷の風合いを表現するのに、レトロ調の印刷ということで造語です。いまはレトロ印刷で検索したら孔版印刷が出てくるようになってきました。

 

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